モバイルノートPCの常識を打ち破るハイパフォーマンスが魅力的な新型「VAIO Z」。レビューの後編は、実際の性能やバッテリー駆動時間、放熱性、静音性をテストする。
【表:今回テストしたVAIO Zの基本スペック】 【拡大画像や他の画像】
ソニーが3月6日に発売する新生「VAIO Z」は、1キロ台前半の可搬性が高いボディに、13.1型フルHD液晶ディスプレイをはじめ、通常電圧版のモバイル向けCore i7、RAID 0構成のクアッドSSD、グラフィックスメモリ1Gバイト付きの外部GPU、Blu-ray Discドライブなど、驚きのハイパフォーマンスを搭載可能なハイエンドモバイルノートPCだ。
先に掲載したレビューの前編では、旧モデルから強化されたポイントを押さえつつ、ボディデザインや基本スペック、通信機能、拡張性、液晶ディスプレイの品質、キーボードやタッチパッドの使い勝手を確認した。
レビューの後編では、VAIO Zがウリとするパフォーマンスを中心に、バッテリーの駆動時間、動作時におけるボディの発熱や内蔵ファンの騒音といった、モバイルノートPCに求められる能力をじっくりテストしていく。
テストした
のは前編と同様、ハイスペックな構成のソニースタイル直販VAIOオーナーメードモデル「VPCZ11AFJ」と店頭販売向け標準仕様モデル「VPCZ119FJ/S」の試作機、そして従来の標準仕様モデル「VGN-Z73FB」を加えた3台だ。
直販モデルと店頭モデルの違いはもちろん、旧モデルとの差も併せてチェックしていきたい。ただし、今回テストしたのは製品版に近い試作機で、実際の製品とは異なる可能性がある点はあらかじめお断りしておく。
●計3台の新旧「VAIO Z」を横並びでテスト
テストの前に、今回集めた3台のスペックをおさらいしておこう。
直販モデルのVPCZ11AFJはかなりハイスペックだ。CPUはCore i7-620M(2.66GHz/最大3.33GHz/3次キャッシュ4Mバイト)、メインメモリは4GバイトDDR3 SDRAM(2Gバイト×2/PC3-8500)、データストレージは合計256GバイトのSerial ATA SSD(64GバイトSSD×4によるRAID 0構成)
、光学ドライブはBlu-ray Discドライブ、液晶ディスプレイの解像度は1920×1080ドットとなっている。
店頭モデルのVPCZ119FJ/Sは、CPUにCore i5-520M(2.4GHz/最大2.93GHz/3次キャッシュ3Mバイト)、メインメモリに4GバイトDDR3 SDRAM(2Gバイト×2/PC3-8500)、データストレージに合計128GバイトのSerial ATA SSD(64GバイトSSD×2によるRAID 0構成)、光学ドライブにDVD±R DL対応DVDスーパーマルチドライブ、ディスプレイに1600×900ドット表示の液晶を採用している。
どちらのモデルもチップセットはIntel HM57 Express、外部GPUはNVIDIA GeForce GT 330M(専用グラフィックスメモリ1Gバイト)を装備している。また、Core i5/i7はグラフィックス機能のIntel HD GraphicsをCPU側に統合し
Arado rmt ているが、VAIO Zでは独自の「ダイナミック?ハイブリッドグラフィックス」機能により、この消費電力が低いIntel HD Graphicsと、高性能な外部GPUのNVIDIA GeForce GT 330Mを状況に応じて使い分けることが可能だ。
一方、従来の店頭モデルであるVGN-Z73FBは、CPUがCore 2 Duo P9700(2.8GHz)、チップセットがIntel GM45 Express(グラフィックス機能のIntel GMA 4500HMDを内蔵)、外部GPUがNVIDIA GeForce 9300M GS(専用グラフィックスメモリ256Mバイト)、データストレージが500GバイトHDD(5400rpm)と、新モデルより世代が1つ前のアーキテクチャを用いている。
今回テストしたVAIO Zの基本スペック
製品名 VPCZ11AFJ(直販モデル) VPCZ119FJ/S(店頭モデル) VGN-Z73FB(旧?店
頭モデル)
発売日 2010年3月6日 2009年10月22日
OS 64ビット版Windows 7 Home Premium
CPU Core i7-620M(2.66GHz/最大3.33GHz) Core i5-520M(2.4GHz/最大2.93GHz) Core 2 Duo P9700(2.8GHz)
メインメモリ 4GバイトDDR3 SDRAM(2Gバイト×2/PC3-8500)
チップセット Intel HM57 Express Intel GM45 Express
外部GPU NVIDIA GeForce GT 330M NVIDIA GeForce 9300M GS
外部GPUのグラフィックスメモリ 1Gバイト 256Mバイト
液晶ディスプレイ 13.1型ワイド
rmt Red Stone (1920×1080ドット) 13.1型ワイド(1600×900ドット) 13.1型ワイド(1366×768ドット)
データストレージ 256GバイトSSD(64Gバイト×4、RAID 0) 128GバイトSSD(64Gバイト×2、RAID 0) 500GバイトHDD(5400rpm)
光学ドライブ Blu-ray Discドライブ DVDスーパーマルチドライブ
天面カラー プレミアムカーボン シルバー ブラック
パームレスト ブラック シルバー ブラック
無線WAN ?
WiMAX IEEE802.16e-2005準拠(最大受信速度20Mbps/最大送信速度6Mbps) ?
無線LAN IEEE802.11a/b/g/n準拠(最大送受信速度300Mbps) IEEE802.11a/b/g/n準拠(最大受信速度300Mbps/最大送信速度
150Mbps)
ノイズキャンセリングヘッドフォン 付属 ?
指紋センサー 搭載
TPMセキュリティチップ 搭載 ? 搭載
FeliCaポート 搭載(Ver.2.0) 搭載(Ver.1.0)
Webカメラ 搭載
USB/IEEE1394 USB 2.0×3 USB 2.0×2/IEEE1394×1
キーボード 日本語配列
キーボードバックライト 搭載 ?
バッテリー Sバッテリー
ACアダプタ 標準ACアダプタ
オフィススイート ? Office Personal 2007
セキュリティ対策ソフト マカフィー?PCセキュリティセンター(60日間限定版)
動画/静止画/音楽編集ソフト Photoshop Elements 8 & Premiere Elements 8(いずれも30日間体験版) Photoshop Elements 7 &
Premiere Elements 7(いずれも30日間体験版)
日本語入力ソフト ATOK 2009 for Windows(30日間限定版)
保証サービス 3年間保証<ベーシック> 1年間保証
価格 31万6800円(直販価格) 24万円前後(予想実売価格) 21万円前後(発売時の実売価格)
●Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア
まずは、パフォーマンステストの結果からチェックする。VAIO Zには描画性能を切り替えるダイナミック?ハイブリッドグラフィックス機能があるため、テストは外部GPUのNVIDIA GeForce GT 330Mを使用した場合(AUTOモード/ACアダプタ接続時 ※SPEEDモードと同等)と、CPU統合グラフィックス機能のIntel HD Graphicsを使用した場合(AUTOモード/バッテリー駆動時 ※STAMINAモードと同等)の両方で行った。
Windowsエクスペリエンスインデ
リネージュ rmt ックスの結果を見ると、プライマリハードディスクのスコアでSSDのパフォーマンスが高く評価されているのが分かる。合計128GバイトのデュアルSSDを内蔵したVPCZ119FJ/Sでは7.3、合計256GバイトのクアッドSSD構成を内蔵したVPCZ11AFJに至っては7.6と、スコア上限の7.9に近い高い値が得られた。500GバイトHDD(5400rpm)を搭載するVGN-Z73FBのスコアも5.9と悪くはないが、新モデルの2台とは大きく差が開いている。
次に高い値が出たプロセッサのスコアは、CPUのグレードが素直に現れた。Core i7-620M(2.66GHz/最大3.33GHz)を装備したVPCZ11AFJは6.9、Core i5-520M(2.4GHz/最大2.93GHz)採用のVPCZ119FJ/Sは6.7を獲得しているが、VGN-Z73FBも2.8GHzと高クロックのCore 2 Duo P9700を備えているため、スコアは6.4と新モデルに引き離されていない。
グラフィックス関連のスコアは、ダイナミック?ハイブリッドグラフィックス機能の設定によって大きな差が生じる部分だ。NVIDIA GeForce GT 330Mと1Gバイトの専用グラフィックスメモリを採用したVPCZ11AFJとVPCZ119FJ/Sは、モバイルノートPCでありながら、グラフィックスとゲーム用グラフィックスの両方で6.3とかなり高いスコアが出た。従来のVAIO Zは、外部GPUのNVIDIA GeForce 9300M GSがほかのコンポーネントに比べて少し見劣りする印象だったが、新モデルでは描画性能がしっかり改善されている。
新モデルのCPU統合グラフィックス機能であるIntel HD Graphicsについても注目したい。旧モデルのチップセット内蔵グラフィックス機能であるIntel GMA 4500HMDと比較して、3D描画性能や動画の再生支援機能が底上げされ、特にゲーム用グラフィックスのスコアは大差が付いた。もちろん、外部GPUを使わなくてもWindows 7の基本操作は快適にこなせる。
●PCMark05、PCMark
Vantage(x64)のスコア
次にアプリケーションベースの定番ベンチマークテストであるPCMark05とPCMark Vantage(x64)を実行し、システム全体のパフォーマンスを確認した。
PCMark05は旧世代のテストで、最新CPUに追加された機能などがスコアに直結しにくく、その多くがシングルスレッドで行われることもあり、CPUやMemoryのスコアは新旧モデルでそれほど大きな差が見られない。しかし、Graphicsのスコアは2倍近く、HDDのスコアでは4.5倍以上も新モデル2台が旧モデルを上回り、明暗が分かれた。VPCZ11AFJとVPCZ119FJ/SのHDDスコアは、2万6000以上という驚異的な値をたたき出しており、RAID 0によるデュアルSSD/クアッドSSDの高速性を見せつけている。デュアルSSDはクアッドSSDと同レベルのスコアを獲得しており、健闘が目立つ。
世代が新しいテストのPCMark Vantage(x64)では、新旧モデルの差がより開いた。グラフィックスとデータストレージの性能が大き
く作用するGamingでは約2.5倍、データストレージのみを評価するHDDでは4.5倍以上も新モデル2台が旧モデルに勝っている。また、MusicやProductivityについてもデータストレージの性能が反映され、新モデル2台が旧モデルを圧倒した。PCMark Vantageではマルチスレッドへの最適化も進んでいるが、それよりもデータストレージの違いが最も結果に影響したといえる。
さらに、総合スコアのPCMarkやCommunicationsでは、Core i5/i7(開発コード名:Arrandale)で追加された新命令であるAES-NI(Advanced Encryption Standard-New Instruction)が有効なAESのデータ暗号化/複合化処理も含まれるため、やはり新モデル2台が飛び抜けている。
●CrystalDiskMark 2.2、PCMark05/PCMark Vantage HDDテストのスコア
以上のテスト結果を大きく左右したデータストレージの性能については、
リネ rmt CrystalDiskMark 2.2(ひよひよ氏作)と、PCMark05およびPCMark VantageのHDD関連テストを実行し、より詳しく調べた。
データストレージのリード/ライト性能を調べるCrystalDiskMark 2.2は、VPCZ11AFJが突出したスコアを記録した。RAID 0構成のクアッドSSDによって、シーケンシャルリードで578.4Mバイト/秒、シーケンシャルライトで418.2Mバイト/秒とSerial ATA(転送速度300Mバイト/秒)の壁を越えた速さを発揮したことに加えて、ランダムリード/ライトも抜群に速い。それに続くデュアルSSDのVPCZ119FJ/Sも、モバイルノートPCとしては抜きん出たパフォーマンスを実現しているのが分かる。もはやHDDとは段違いの性能だ。
一方、Windowsやアプリケーションの起動、標準的なアプリケーションによるデータの読み書きなどをシミュレートするPCMark05/PCMark VantageのHDD関連テストでは、違った傾向が見られた。デュアル/クアッドSSD
搭載の新モデル2台がHDD搭載の旧モデルを圧倒しているのは変わらないが、デュアルSSDとクアッドSSDのパフォーマンスに大きな差が出ていない。
全般的にクアッドSSD搭載のVPCZ11AFJが優勢だが、データサイズが異なるランダムリード/ライトが頻繁に発生するような状況では、デュアルSSDでクアッドSSDに匹敵する(場合によっては上回る)性能が得られるケースもあるという結果になった。予算に余裕があればクアッドSSDは実に魅力的な選択肢だが、128GバイトのデュアルSSDでも新型VAIO Zらしいスピードは十分味わえるため、デュアルSSDは買い得感がなかなか高いといえる(ただし、購入後にクアッドSSD構成に増設することはできないので、ここは大きな悩みどころだ)。
なお、試作機を使用した感覚としては、デュアルSSDのVPCZ119FJ/Sでも実に快適にOSやアプリケーションの操作が行えた。ハイスペックなデスクトップPCのように、モバイルノートPCでWindows 7がキビキビと動作するのは何とも心地がいい。さらにクアッドSSDのVPCZ11AFJでは、ファイルのコピーや解凍、アプリケーションの導入や削除といった操作が機
敏で、まさにストレスフリーといった印象を受けた。
●3DMark06、各種ゲームベンチマークソフトのスコア
データストレージに続き、大幅にアップグレードしたグラフィックス機能についても調べていこう。まずは3D描画性能を総合的に評価する3DMark06と、定番ゲームベンチソフトのFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3を実行した。
DirectX 9世代のテストとなる3DMark06では、やはりNVIDIA GeForce GT 330Mと1Gバイトの専用グラフィックスメモリを備えたVPCZ11AFJとVPCZ119FJ/Sが大きくリードした。GPU性能が影響しないCPUのスコアはCPUのグレードに準じた結果となったが、総合スコアの3DMarksでは約2.7倍も前モデルのVGN-Z73FB(NVIDIA GeForce 9300M GSと256Mバイトの専用グラフィックスメモリを実装)を上回っている。
VPCZ11AFJとVPCZ119FJ/SのCPUに統合されたIntel HD Graphicsと比較した場合、NVIDIA GeForce GT 330Mを用いることで、総合スコアは3倍以上にアップすることになる。もっとも、外部GPUを使わない場合についてもIntel HD GraphicsはVGN-Z73FBのチップセット内蔵グラフィックス機能(Intel GMA 4500HMD)に比べてワンランク上の3D描画性能を確保しており、CPU性能も加味した3DMarksではNVIDIA GeForce 9300M GSに迫っている。
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3はDirectX 8.1世代の古いテストなので、GPUの世代による差が大きく現れていない。NVIDIA GeForce 9300M GSを搭載した前モデルのVGN-Z73FBであってもLowの設定では8730と高いスコアだったため、この程度のゲーム
であれば快適にプレイできる。さらにVPCZ11AFJとVPCZ119FJ/Sは、Highの設定でも高いスコアを維持している点に注目だ。
VAIO Zをゲームマシンに使うユーザーは少ないだろうが、その3D描画性能は侮れないため、外部GPU限定でより世代が新しいゲームベンチマークソフトのSTREET FIGHTER IV BenchmarkとBIOHAZARD 5ベンチマークも試してみた。STREET FIGHTER IV Benchmarkの設定は、初期状態から垂直同期をオフにし、フルスクリーンモードに変更している(解像度は1280×768ドット)。BIOHAZARD 5ベンチマークの設定は初期状態のままで、DirectX 10対応版のベンチマークAを実行した。
これらのテストは新旧モデルで明らかな違いが出た。VPCZ11AFJとVPCZ119FJ/SはSTREET FIGHTER IV BenchmarkのスコアでRANK A(とても快適にプレイ可能)、アベレ
ージで約76fpsを獲得。CPU性能の影響が大きく、マルチスレッドに最適化されたBIOHAZARD 5ベンチマークについても約40fpsを確保でき、評価としてはB(一部重くなるが問題なく動作)だった。解像度を上げたり、エフェクトを付加するのは厳しいが、デフォルトの状態ならばプレイ可能といえる。
旧モデルのVGN-Z73FBは、STREET FIGHTER IV Benchmarkのスコアが平均9.33fps/RANK E(スペック不足)、BIOHAZARD 5ベンチマークのスコアが6.7fps/評価C(動作が重くプレイに支障がある)にとどまり、どちらも描画が追いつかず、まったくプレイできない状態だ。
●設定によるバッテリー駆動時間の違い
パフォーマンス面で目覚ましい進化を遂げたVAIO Zだが、その一方で気になるのがバッテリーの持ちだろう。新モデルのバッテリー駆動時間は、付属の標準バッテリー(6セル/10.8ボルト 5200mAh 57ワットアワー)で最長約7.5時間、別売のLバッテリー(9セル/10.8ボルト 7800mAh 85ワットアワー)
で最長約11時間とされており、旧モデルに比べて標準バッテリーで約1.5時間、Lバッテリーで約2.5時間短くなった。ちなみに旧モデルのバッテリーは標準タイプが10.8ボルト 5400mAh、Lタイプが10.8ボルト 8100mAhと新モデルより少し容量が大きい。
そこで新旧モデルで設定を統一し、実際のバッテリー駆動時間を比較してみた。テストは、動画再生とWebブラウズを想定した2パターンで行っている。動画再生のテストは1080pのWMV HDファイルをバッテリーが切れるまで連続再生した。Webブラウズのテストはバッテリー駆動時間計測ソフトのBBench 1.01(海人氏作)を用いている。BBenchの設定は、10秒ごとにキーボード入力、60秒ごとに無線LAN(IEEE802.11g)によるインターネット巡回(10サイト)を行うというものだ。
VAIO Zの設定は下のグラフ内に示した通り、ダイナミック?ハイブリッドグラフィックスの動作モード、Windows 7の電源プラン、液晶ディスプレイの輝度を変更し、設定によって駆動時間がどのように変わるかをチェックした。BBenchについては、新モデル2台に限りオプションのL
バッテリー装着時の駆動時間も計測している。そのほか、自動輝度調整やキーボードバックライトはオフ、放熱制御はバランス、音量は50%(ヘッドフォン装着)、Bluetoothはオン、光学ドライブは自動電源オフに設定した。
WMV HD動画の連続再生では、旧モデルのVGN-Z73FBが2時間32分と最も長く駆動した。店頭モデルのVPCZ119FJ/Sもそれに肉薄する2時間27分という結果が得られており、スタミナは同レベルといえる。ハイスペックな直販モデルのVPCZ11AFJでは2時間16分まで駆動時間が短くなったが、VPCZ119FJ/Sとの差は10分しかない。
BBench 1.01の結果は公称スペックと異なり、VPCZ119FJ/SがVGN-Z73FBをわずかながら逆転している。この原因としては、テスト時(室温は23?24度)にVGN-Z73FBのほうがファンを高速回転させていることが多かったこと、液晶ディスプレイの輝度を同じ値(%)にセットしてもVGN-Z73FBのほうがVPCZ119FJ/SとVPCZ119FJ/Sより少し明るいこと、
高い負荷がかかっていない場合のシステム全体における電源管理の違いなどが考えられる。
ちなみに、国内メーカーが公称のバッテリー駆動時間として幅広く採用している「JEITAバッテリー動作時間測定法(Ver.1.0)」は、液晶ディスプレイの最低輝度が低ければ低いほど有利な測定法だ。旧モデルのVGN-Z73FBは液晶ディスプレイの最低輝度がVPCZ119FJ/SやVPCZ119FJ/Sより低く設定できるが、これが公称のバッテリー駆動時間に少なからず影響していると予想される。この測定法は2001年に定められたもので、昨今のモバイルノートPCの利用スタイルからかけ離れているため、そろそろ改訂してほしいところだ。
さて、BBench 1.01のテスト結果に話を戻すと、CPU統合グラフィックスを用いた場合、VPCZ119FJ/Sは標準の設定(電源プランは「バランス」、ディスプレイ輝度は64%)で5時間58分、Lバッテリー装着時であれば9時間13分もの長時間駆動が行えた。VPCZ11AFJは標準の設定で5時間7分、Lバッテリー装着時で8時間23分となっており、VPCZ119FJ/Sのほうが50分ほど長く駆動できる計算だ。
外部GPUを使って最大輝度で運用した場合はバッテリー駆動時間がかなり短くなるが、電源プランを「省電力」にセットし、輝度を40%まで下げた場合はVPCZ119FJ/Sで25分、VPCZ11AFJで36分標準設定より長く駆動できた。さらに少しでもバッテリー駆動時間を延長したい場合は「VAIO省電力設定」で、表示色を32ビットから16ビットに、リフレッシュレートを60Hzから40Hzに変更したり、「VAIOの設定」で「スタミナ壁紙」を設定したりするなどの手もある。
なお、今回のテストでは条件をそろえるためオフに設定したが、新型VAIO Zは照度センサーによる液晶ディスプレイの自動輝度調整機能が備わっているため、普段はこれを利用することで、必要以上に高輝度の設定で使い続けてバッテリー駆動時間を損ねてしまうことが避けられるだろう。
モバイルノートPCにどれくらいのバッテリー性能を望むかは利用スタイルによって異なるが、この結果から新型VAIO Zはパフォーマンスと本体重量、そしてバッテリー駆動時間までも含めたバランスが非常に高いレベルで取れていることが分かった。
●ボディ各部の表面温度
パフォーマンスの向上
で気になる動作時の発熱もチェックした。新旧3台のVAIO Zを樹脂製のデスクに離して設置し、ボディ各部で最も高温になる場所の表面温度を放射温度計で計測した。計測したのは、Windows 7の起動から30分間アイドル状態で放置した場合と、そこからシステムに高い負荷がかかる3DMark06のデモを30分間実行し続けた場合の2パターンだ。
VAIO ZにはACアダプタを接続し、グラフィックス機能はより温度が上がるように外部GPUを利用した。液晶ディスプレイの輝度は最大、ワイヤレス通信機能はオン、音量は半分(ヘッドフォン接続)に統一している。テスト時の室温は約23?24度だ。
テスト結果は新旧モデルで傾向が分かれた。新モデル2台はパームレストを樹脂製の別パーツで仕上げているため、内部の熱が表面に伝わりにくく、アイドル時はもちろん、高負荷時でも25?27度と温度がほとんど上がらず、手のひらに不快な熱を感じることはなかった。
ハイスペックな直販モデルのVPCZ11AFJは、全体的に店頭モデルのVPCZ119FJ/Sより少し発熱しやすく、触り比べてみると確かに温度の違いが分かるが、発熱量の差に目くじらを立てるほどではない。
新モデル
はキーボードやタッチパッドも含め、ボディの表側が旧モデルのVGN-Z73FBより総じて低温だったが、CPUや外部GPUが位置する底面の左側(排気口付近)は新モデル2台のほうが熱くなりやすかった。
机上で使う場合は問題ないが、ヒザの上などで長時間利用すると、体温がPCを温めてしまい、よりボディが高温になりがちなので注意したい。特に夏場のモバイルシーンなどでは環境温度もかなり上がるので、軽量ボディに高性能を凝縮し、Core i5/i7のIntel Turbo Boost Technologyにも対応したVAIO Zでは、普段から排気口周辺をふさいだりせず、高温の環境で長時間使い続けないよう心がけたほうがいいだろう。
今回のテスト結果から、新型VAIO Zはパフォーマンスの向上やボディの薄型化を実現していながら、優れた放熱性も兼ね備えているといえる。
●動作時の騒音レベル
新型VAIO Zでは、放熱強化のために薄型で冷却効率の高いファンを新たに採用している。そこで、VAIO Zをデスクに置き、一定の距離から騒音計で動作時の騒音レベルを計測してみた。
騒音計のマイクは、使用時におけるユーザーの耳の位置を
想定し、ボディ中央から約30センチ離し、設置面から約50センチの高さに固定している。室温は約23?24度、環境騒音は約28デシベル(A)で、周囲の雑音がほとんど聞こえない静かな環境で計測した。計測は、Windows 7の起動から30分間アイドルで放置した状態と、システムに高い負荷がかかる3DMark06のCPUテストを30分間実行し続けた状態の2パターンで行っている。
VAIO Zの計測条件は発熱のテストと同様だ。ACアダプタを接続し、グラフィックス機能は外部GPUを利用している。「VAIOの設定」ではファン制御を3段階に調節できるが、初期設定の「バランス」(3段階の中間)とした。
テスト結果は、新モデル2台が旧モデルより静かだった。VPCZ11AFJとVPCZ119FJ/Sはアイドル時にファンが低速で回転し、注意しなければファンノイズが気になることはない。エアコンなどの家電が動作している室内では、環境音にかき消されてしまうほどの回転音だった。もちろん、データストレージにSSDを採用しているため、ファンの回転音を除くと、ほぼ無音だ。
一方、旧モデルのVGN-Z73FBはアイドル時でも新モデルより高速にファンを回し
ていたため、動作音が大きくなっている。それでも利用していて不快になるレベルではなく、十分静かだった。
高負荷時ではファンが高速回転するため、3台の新旧モデルで騒音レベルに差は付かなかった。今回集めた3台は、ファンが高速回転することで風切り音は大きくなるものの、耳障りな異音が鳴るようなことはなかった。新型VAIO Zは高い放熱性に加えて、静音性についても不満がないといえる。
●“旧Z”の高いハードルを乗り越えた“新Z”
2回に渡って新型VAIO Zをレビューしてきたが、その高い完成度にはうならされた。2008年に初代VAIO Z(VAIO type Z)が登場したとき、次の世代でこれを超えるフラッグシップモデルを生み出すのは難しいだろうと感じたが、それを見事に成就させた開発陣の苦労には敬意を表したい。
切削加工のアルミを用いたボディデザイン、Core i5/i7やデュアル/クアッドSSD、NVIDIA GeForce GT 330Mを組み合わせた圧倒的なパフォーマンス、広色域かつフルHDにも対応する高品位なワイド液晶ディスプレイ、独自のサウンドチップやノイズキャンセリング機能など音へのこだわり、使いやすいバックライト付きキーボードとタ
ッチパッド、多くのユーザーにとって満足できるであろうバッテリー駆動時間、VAIO独自のソフトウェア群、そして優れた熱設計と、どこを見ても質が高く、VAIOの最上級モバイルノートPCにふさわしい風格がある。
VAIO Zで1つ大きな問題を感じるとすれば、その豪華な仕様が跳ね返ってくる価格面だろう。店頭モデルの実売価格は24万円前後で、直販モデルの最低価格は15万9800円と意外に安いが、今回テストした機材の構成では31万6800円となり、直販モデルでハイエンドな構成にすると40万円を軽くオーバーしてしまう。しかし、同じボディサイズや重量の製品は数あれど、VAIO Zに匹敵するパフォーマンスが得られるモバイルノートPCは皆無なのだから、この価格には説得力がある。
昨今はNetbookブームに続き、より高い性能をリーズナブルな価格で提供するCULVノートPCが国内外のメーカーから多数発売され、ここ2?3年でモバイルノートPCの価格は驚くほど下がったが、スペックが画一化しがちで面白みのある製品は逆に少なくなった印象も受ける。こうした中にあって、ハイエンド志向を極限まで追求したVAIO Zはキラリと光る存在だ。
実際、これほどハイパフォーマンスなPC環境をどこへでも持ち出
せるという痛快な気分は、ほかではなかなか味わえない。パフォーマンスとモビリティの両方をハイエンドの水準で満たしてくれるノートPCが欲しいならば、VAIO Zは間違いなく購入候補の筆頭に挙げられる。【前橋豪(撮影:矢野渉)】
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引用元:
巨商伝 専門サイト